制作と製作の違いは?正しい使い分けとそれぞれの意味を紹介
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制作 と 製作
どちらも作る意味の「せいさく」ですが、どのように使い分ければ良いか迷いませんか?
正しい意味を理解していないと、微妙なニュアンスが伝わらなかったり、間違って伝わったりすることがあるため注意が必要です。
そこで、制作と製作の違いや意味と正しい使い分けを紹介します。
制作と製作の意味と違い
大辞林によると、
せいさく【制作】
芸術作品や映画・演劇・放送番組などをつくること。「彫刻を-する」「卒業-」→製作
せいさく【製作・制作】
- 道具や機械などを使って、物品を作ること。
- 「制作」に同じ。「娯楽番組を-する」〔同音語の「制作」は芸術作品や放送番組などを作ることであるが、それに対して「製作」は、主に道具や機械を使って物品を作ることをいう〕
と解説されています。
「日本語使い分け字典」によると、
制作
作品(絵画、工芸品、展覧会の出品作品など)製作
実用的で量産できるもの(精密機械、器具など)
と解説されています。
ここから考えると、制作は芸術作品を作る、製作は実用品(製品)を作るというところに違いがあります。
また、「制」は整える(制定、制度など)、「製」は作る(製品、製造など)という意味が含まれていることから、物かどうかで判断することもできます。
では、どのように使い分けたら良いのでしょうか?
制作と製作の使い分け
それぞれの意味からすると、このように使い分けることができます。
制作
- 肖像画を制作する。
- 工芸品を制作する。
- 彫刻を制作する。
- 政令を制作する。
製作
- 家具を製作する。
- 説明書の通りにプラモデルを製作する。
- 新しい機械を製作する。
しかし、制作と製作の使い分けが特殊な業界があります。
映画業界の「せいさく」
映画業界における「せいさく」は、芸術作品か実用品(製品)かという意味では使い分けられていません。
経済産業省の「映像製作の収支構造とリクープの概念」に、次のような記載があります。
“製作”は企画開発の段階から、資金を集めて作品を作り、それを商品に変え、様々なビジネスを通じて利益を上げていく、その全過程を指し示すものである。
製作費を集めた後にやるのが“制作”のプロセスである。この「衣」が下に付かない制作のほうは、「作品を作る」という行程で、「ある金額を提示され、それで作品作りを請け負い、納品したところで完了」である。
映画作りの工程に着目しており、「制作」は映画作りの一部分(作品そのものを作る人)、「製作」は映画作りの全行程(協力者を含むすべての人)として使い分けています。
例えば、映画「モンスターズ・インク」は、
制作:ピクサー(アニメーション担当)
製作:ディズニー(配給、販売促進)
となります。
このような考え方は、テレビ業界においても同じことが言えます。
教育業界の「せいさく」
教育業界における「せいさく」は、芸術作品か実用品(製品)かという意味で使い分けられますが、昔からそのような意味で使い分けられていたわけではありません。
戦後においては、小学校と中学校は図画工作、高校は図画という科目だったため、文部科学省が告示する学習指導要領(教育課程の基準)では、「製作」が使われていました。
昭和の途中で学習指導要領が改訂され、中学校の図画工作と高校の図画はそれぞれ美術と技術に分かれましたが、制作と製作の意味の解釈が問題となり、昭和の間は「製作」のままでした。
しかし、平成元年度に学習指導要領が改訂されて以降、「制作」と「製作」が明確に使い分けられるようになりました。2016年時点の使い分けは、このようになっています。
小学校
製作:図画工作、家庭
中学校
制作:美術、技術・家庭
製作:技術・家庭
高校
制作:芸術、工業、商業、情報
製作:家庭、農業、工業、水産
小学校では、絵を描いたり物を作ったり幅広く活動していることから、「製作」のみが使われています。一方、中学校と高校では、芸術やデザインに関わる場合は「制作」、ものづくりに関わる場合は「製作」として使い分けられています。
しかし、これまでの歴史の流れ(意味の解釈の仕方)を考えると、今後も今と同じ意味で使い分けられるとは限りません。
まとめ
以上、制作と製作の違いでした。
制作と製作の違いをまとめると、このようになります。
制作:芸術作品を作ること
製作:道具や機械を使って物品を作ること
テレビ・映画業界の意味
制作:テレビ・映画作りの一部分
製作:テレビ・映画作りの全行程
教育業界
一般的な意味と同じ使い分けだが、今後も今と同じ意味で使い分けられるとは限らない。
多くの人は、一般的な意味を覚えておけば問題ありません。
テレビや映画業界は一般的な意味とは異なるため、その業界に関わる人は使い分けに注意してくださいね。