そうめんと冷麦の違いは?それぞれの定義と原料や作り方を比較
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「そうめん」 と 「冷麦」
味も見た目もほぼ同じそうめんと冷麦の違いって何でしょう?
大した違いがないのであれば、どっちを買ったら良いのか迷いますよね。
そこで、そうめんと冷麦違いについて定義や原料、作り方などを比較してみました。
そうめんと冷麦の違い
そうめんと冷麦は、味も見た目もほぼ同じで、パッと見では違いが分かりません。どこが同じでどこに違いがあるのか、こちらの比較表でチェックしてみましょう。
※表に出てくる麺の太さを表す数字は長径です。長径とは、楕円の最も長い部分の半径のことです。
項目 | そうめん | 冷麦 |
---|---|---|
作り方 | 手延べ 機械 |
手延べ 機械 |
原料 | 小麦粉 食塩 水(油) |
小麦粉 食塩 水(油) |
太さ | 長径1.3㎜未満 ※1 |
長径1.3mm~1.7㎜未満 |
製法の違い (昔の考え) |
生地を引き延ばして作る | 生地を細く切って作る |
彩色めんの有無 ※2 |
製造業者による | 製造業者による |
食べる地域 | 東アジア | 日本 |
※1 手延べそうめんの場合は長径1.7㎜未満
※2 ピンクや緑など、色のついた麺
そうめんと冷麦は、原料には違いがなく、太さに明らかな違いがあります。太さについては定義がありますが、定義を理解するために、そうめんと冷麦の製法を知っておきましょう。
そうめんと冷麦の製法
そうめんも冷麦も作り方は同じですが、ともに2種類の作り方があります。それぞれの作り方は、このように分類されます。
小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練った生地を、細く切って乾燥させる製法、かつ機械で製造しているもの。
このようにして作られたそうめん・冷麦を、機械そうめん・機械冷麦と言います。
小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練り、食用油もしくは小麦粉やでん粉を塗ってから、よりをかけながら引き延ばして乾燥・熟成させる製法で作られたもの。および「手延べ干しそうめんの日本農林規格」を満たしたもの。
このようにして作られたそうめん・冷麦を、手延べそうめん・手延べ冷麦と言います。近年では、機械化が進んでいるようです。
昔は、そうめんと冷麦を製法によって区別ができると考えられていたようです。そうめんと冷麦の製法について、昔の人はどのように考えていたのでしょうか。
そうめんと冷麦の製法による区別
そうめんは手延べで作るもの
奈良時代に、中国から伝わった索餅・麦縄(小麦粉と米粉を水で練って塩を加えて縄上にしたお菓子)がありました。この索餅が、そうめんの起源と言われています。
この食べ物の形状は詳しく解明されておらず、長い間手延べの麺のようなものだと考えられていました。それが室町時代に入り、現在の形になったと言われることから、そうめんは手延べにて作るものとされてきました。
また、当時そうめんは、蒸して熱い状態で食べることが主流だったと言われています。
冷麦は切って作るもの
一方、室町時代に新たな麺の製法が登場しました。
そうめんと同様の生地を、包丁や刃物で切って作る麺です。こちらは、截麦(きりむぎ)などと呼ばれ、冷やして食べるのが主流だったと言われています。
その後、日本で見つかった日記にも切麵、切麦、冷麦という言葉が頻繁に出てくることや、それらが切り麺であると記されていることから、冷麦は切って作られるものとされてきました。
現在は製法による区別はない
手延べ麺は「そうめん」、切り麺は「冷麦」と区別されていたようですが、現在では、切って作るそうめんもあれば、手延べで作る冷麦もあります。製法による区別は正確な情報にはなりえません。
では、そうめんと冷麦の違いを区別する方法は他にあるのでしょうか?
色付きの麺の有無で違いを区別する説
冷麦には彩色めんが混ざっている?
そうめんと冷麦の違いについて、次のような説があります。
冷麦 :彩色めんが混ざっている
彩色めんとは、ピンクや緑など色のついた麺のことを言います。
なぜこのような説があるのでしょうか?
彩色めん入り冷麦は関東では当たり前だった
冷麦に彩色めんを入れる習慣は、そうめんと冷麦を区別するために製麺所が始めたと言われています。1980年代後半までは、関東地方(特に東京を中心)に多く見られました。
しかし、1990年代には徐々に縮小していき、大多数が白一色の冷麦になったとされています。
現在の彩色めん事情
一部の製造業者は、現在でも冷麦に彩色めんを入れる風習を続けています。また、彩色めんが入っていると子供が喜ぶということから、近年ではそうめんに入れられていることもあるようです。彩色めんの有無で、そうめんと冷麦を区別するのは難しいようです。
そうなると、そうめんと冷麦の違いをはっきり区別するものは「太さ」だけでしょうか?
そうめんと冷麦の定義は法律で決められている
そうめんと冷麦の違いは、「太さ」が大いに関係しています。それぞれの違いをはっきりと示す太さの定義は、法律によって定められています。
乾めんに関する規定
「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」という法律の中に、次のような記載があります。
(日本農林規格の制定)
第七条 農林水産大臣は、第一条に規定する目的を達成するため必要があると認めるときは、農林物資の種類を指定して、これについての規格を制定する。
これは、農林水産大臣が日本農林規格(別名:JAS規格)という規格を制定することができるというものです。
このJAS規格の一つ「乾めん類品質表示基準」の第4条に、そうめんと冷麦の違いに関わる文言があり、
- 機械麺のそうめん
- 機械麺の冷麦
- 手延べそうめん
について、それぞれの麺の太さを定義しています。
種類 | 麺の太さ |
---|---|
機械麺のそうめん | 長径1.3㎜未満 |
機械麺の冷麦 | 長径1.3㎜以上1.7㎜未満 |
手延べそうめん | 長径1.7㎜未満 |
※2004年JAS規格改定により適用
麺の太さは直径ではなく、長径(ちょうけい)で示されています。長径とは、楕円の最も長い部分の半径のことを指します。つまり、麺の直径が2.6㎜未満であれば、そうめんということになります。
しかし、この定義を見る限り、そうめんの太さの定義は2つあります。なぜ2つ定義があるのかというと、「半田そうめん」というそうめんが関係しています。
「半田そうめん」は徳島県の名産品で、江戸時代から続く製法で作られてきた伝統あるそうめんです。太さが長径1.7㎜前後ありますが、太さの基準で「冷麦」に名称を変更するのはおかしいとして、「手延べそうめんの場合は長径1.7㎜未満」という改定がなされたとされています。
生めん・茹でめんに関する規約
乾めんとは別に、生めんと茹でめんには「生めん類の表示に関する公正競争規約」という規約があります。この規約の第2条に、次のような記載があります。
2 この規約で 「うどん」とは、ひらめん、ひやむぎ、そうめん、その他名称のいかんを問わず小麦粉に水を加えて練り合わせた後製めんしたもの又は製めんした後加工したものをいう。
そうめんも冷麦も、この規約上では「うどん」に分類されます。
ただし、別ページの「品名等の表示基準 第1条」に、次のような記載があります。
○○うどん、ひやむぎ、ひらめん、きしめん、ほうとう等一般消費者に誤認されない名称に替えることができる。
これは、規約上の分類はうどんであっても、製造・販売業者の意向で自由に名称を変えて良い(ただし、一般消費者に誤解されない範囲で)ということを意味します。茹でめんとして販売されているシマダヤの「流水麵そうめん」などが、この規約に当てはまります。
つまり、そうめんも冷麦も分類(原料)はうどんと同じであり、麺の太さによって名称が異なるということになります。極端な話、そうめんも冷麦も「うどん」と言っても間違いではないということです。
では、どちらを選べば良いのでしょうか?
そうめんと冷麦を選ぶ基準
そうめんと冷麦は原料が同じであるため、そのものの味に違いはありませんが、太さが違うため食感に違いがあります。どちらを買うか迷った際には、次の項目を基準に考えてみてはいかがでしょう。
そうめん
◯つゆの味を楽しみたい
そうめん
◯麺のコシを楽しみたい
冷麦
細い麺はのどごしが良くてつゆが絡みやすく、太い麺はコシがあると言われています。また、一般的なスーパーなどで購入できるそうめんと冷麦に、値段の違いはそれほどありません。のどごしを楽しむか、麺のコシを楽しむか、その日の気分で変えてみると良いでしょう。
さて、ここまでそうめんと冷麦の違いを見てきましたが、日本以外の国のそうめんについて見ていきましょう。
日本以外の東アジアのそうめん
そうめんが食されている国と、そうめんの呼び名がこちらになります。
国 | そうめんの呼び名 |
---|---|
中国 福建省 福州 |
索麵(ソッミェン) |
中国 福建省 泉州 |
麵綫(ミーソア) 麵綫糊(ミーソアコー)という煮込み麺にして食す |
中国 河北省 |
宮麺(コンミエン) 機械麺 |
台湾 | 麵線(ソーミア) 鰹節の出汁で牡蠣や豚の大腸、野菜などと煮て食す |
韓国 | 소면(ソミョン) |
そうめんの呼び名は、他の国でもどことなく「そうめん」と似た響きに聞こえるような気がしますね。
まとめ
以上、そうめんと冷麦の違いでした。
まとめるとこのようになります。
- そうめんと冷麦は、太さによって名称が分けられている。
- 手延べそうめんに関しては、そうめんと冷麦を太さで分ける定義はない。
- 昔は手延べめんがそうめん、切りめんが冷麦と区別する考え方があったが、違いを表す正確な情報にはなりえない。
- 彩色めんの有無で、そうめんと冷麦を区別するのは難しい。
- 生めん・茹でめんの規約によれば、そうめんも冷麦もうどんに分類される。
- そうめんも冷麦も原料は同じ。
- そうめんは東アジアでも食されているが、冷麦は日本で食されている。
高級そうめんで有名な「揖保乃糸」を販売している兵庫県手延麵協同組合は、「手延べそうめん」と「手延べひやむぎ」の両方を販売しています。そうめんは喉ごしが良くコシのある麺に仕上がるように、冷麦はモチモチした歯ごたえやソフト感が味わえる仕上がりになるように、それぞれ別の小麦粉を使用しているようです。
そうめんと冷麦は、どちらも素朴な味わいですが、実はとっても奥深い食べ物なのですね。